過疎地域における前庭リハビリテーション導入と効果ー耳鼻咽喉科との連携を通してー
第5回 日本前庭理学療法学会学術大会
【目的】 過疎地域において、めまいに起因するADL・IADL低下、それに伴うめまいへの恐怖心の増悪、活動範囲の狭小化、症状の悪化という負のスパイラルの防止は喫緊の課題である。そこで、今回耳鼻咽喉科と連携して理学療法士による前庭リハビリテーション(前庭リハ)を開始した。前庭リハの専門施設での見学、On the Job Trainingによりガイドラインに沿った前庭リハを提供できる体制を整えたため、前庭リハ開始1年間の取り組みについて紹介件数、単位算定、治療効果について報告する。
【方法】 対象は2025年6月から2026年2月までに当院で前庭リハを開始したものとした。まず、前庭リハ対象者の前庭リハ紹介件数、紹介元、平均実施単位数、性別、年齢、病脳期間を調査した。次に治療効果については前庭リハ3ヵ月間を完遂したものを対象に介入前と3ヵ月後に主観的めまい感として Dizziness Handicap Inventory(DHI)、平衡機能として重心動揺計(グラビコーダ GW-31、アニマ社)を用い、開眼時と閉眼時の総軌跡長・矩形面積、歩行能力としてFunctional Gait Assessment(FGA)を評価した。
【結果】 紹介件数は22例中20例で、1例は院内他科からの紹介、1例は自己受診であった。紹介元はクリニック、大学病院、市中病院の順で多く、平均実施単位数は2.65単位で平均年齢は63.4±16歳、病脳期間は36±57.3ヵ月であった。前庭リハを完遂した症例は22例中18例で介入前後の比較では、DHI、FGA、閉眼矩形面積、閉眼総軌跡長で有意な改善を認めた(DHI:p=0.0005、FGA:p=0.0004、閉眼矩形面積:p=0.005、閉眼総軌跡長:p=0.006)。開眼矩形面積、開眼総軌跡長では有意な変化を認めなかった。
【考察】 本報告は本地域での耳鼻咽喉科医師と協働した前庭リハの提供の可能性を示した。耳鼻咽喉科医との連携のもと、病脳期間を問わず主観・客観指標の双方が改善した意義は大きく、専門資源の限られた過疎地域においても前庭リハの有効性が確認された。
